下の統計は、1998年の通信白書からの引用で、インターネットを用いたオンラインショッピングにおける品目別の売れ行きを示したものです。最も多いのはコンピュータ関係のものです。これは、インターネットユーザが必ずコンピュータユーザであり、またコンピュータに興味を持っていることから当然でしょう。第二位は食料品。これは中元・歳暮や各地のグルメ特産品などでしょう。第三位は本・雑誌・文具であり、第四位に衣料品が入っています。私たちは、この衣料品に注目しています。
1998年の前半まで、私達がよく聞いた評論家の意見は、「衣料品はインターネット販売には向かない」というものでした。理由その1、インターネット販売では、実物を確かめることができない。理由その2、インターネットユーザに女性が少ない。服を買うのに熱心な女性はインターネットに投資しない。でもちょっと待ってください。カタログ通販は実物を確かめずに買い物をしますが、ちゃんと成り立っています。女性のインターネットユーザはまだ少ないかもしれませんが、これから増えるはずです。
このように考えた私たちは、評論家の意見には耳を貸さず、衣料品のショッピングに適したインターフェースの研究に取り組みました。予想通り、というより予想より早く、1998年の暮れには、アメリカから衣料品の成長率が最も高いというニュースが入りました。日本のカタログ通販会社も、インターネット上の店舗に着目し始めています。インターネットを使えば、紙のカタログとは違って品揃えや価格の変更が頻繁に可能だからです。紙のカタログでは季末のパーゲンもできませんよね。
コンピュータ、ソフトウェア、本、CD などと違って衣料品の場合検索が非常に困難です。統一された型番のようなものはありません。したがって購買者はたくさんの店を回って気に入った商品を探さなければなりませんが、これがなかなか大変です。
次に、衣料品の場合自分に似合うかどうかが最も大事な商品選択要素であるため、本の分野で Amazon.com がやっているような書評、コンピュータの分野で雑誌にたくさん出ているような評論家の比較検討記事など、客観的な評価だけでは商品選択ができません。
そこで、Web のブラウザ上にさまざまな店舗からピックアップした商品をならべ、比較検討できるようにしました。また自分に似合っているかどうかは自分でも判断しますが、自分をよく知っている人、つまり家族や恋人の意見が重要です。そこで、グループウェアの技術を利用し、知人と話し合いながら商品の比較検討ができるようにしました。 例えば単身赴任のお父さんが家族と電話しながら、また独身の人ならぱ夜中に恋人と話しながら、インターネットでショッピングするなんていうこともできます。
このように考え、実際にインターネットを用いて複数の人がどのようなショッピング行動をとるのか調査したり、協調のモデルを検討したりしています。1998年度は、西陣織工業組合様の協力により、ネクタイを素材にしたショッピングインタフェースを試作しました。下図はその試作品です。
今後、まだまだ取り組むべき課題はたくさんありそうです。