マルチエージェントによるエンタープライズ・グループウェア

財団法人ソウトウェア工学研究財団の助成による成果があります。


エージェントとは何か

エージェントは、情報学分野で非常によく使われることばです。もちろん、英和辞典を見ると「代理人」という意味が出ていて、概ねそのような意味で使っているのですが、専門的には使う人によって少しずつ意味が違います。私は次のような意味で使っています。

エージェントはユーザの代わりになって、仕事の一部を代行してくれます。たとえば、メールの整理、スケジュールの管理などです。ここでは、主としてスケジュールの管理や頼まれた仕事の管理などをしてくれるエージェントを考えます。

ちなみに、マルチエージェントとは、エージェントがいっぱいあるシステムのことです。オフィスにはたくさんの人がいますから、それぞれの人の仕事を代行するエージェントを考えると、いっぱいいるのは当然ですね。

ワークフローとは何か

これも、よく聞くことばですね。ワークフローとは、何人かの人が順番に仕事をしていく、オフィスの流れ作業です。ワークフローシステムとは、そのような流れ作業の手順を定め、手順通りに仕事が進められるように電子書類を管理し、人々に仕事を依頼したり督促したりします。また、どこまで仕事が進んでいるのかを常に把握し、マネージャにいろいろな情報を提供します。

ワークフローとエージェントの関係

では、エージェントとワークフローはどんな関係があるのでしょうか。ワークフローシステムからはいろんな人に仕事の依頼がされます。一人の人はいろんなワークフローに同時にかかわっているのが普通ですから、たくさんの依頼を受け取ることになります。これらの依頼を管理し、どの仕事をいつやるべきか、エージェントが管理してくれると便利です。

さらに、仕事は思うように進まないこともしばしばあります。ワークフローに遅れが出てしまっり、突然誰かが風邪をひいて休んでしまったり。マネージャはそんなとき、別の人に仕事を頼んだり、仕事が遅れても大丈夫かどうか確認したり、右往左往しなければなりません。こんなマネージャの仕事を少しでも楽にするためのエージェントも考えられています。たくさんのワークフローの状況や、たくさんの人のスケジュールを調べ、一番良いと思われる解決策を提案してくれるものです。垂水はこのようなエージェントについて、NEC にいたときに研究していました。

シミュレーション

マルチエージェントを利用したシステムは大規模なものになります。会社の人がみんなエージェントを使わなければシステムの効果が上がりません。ところが、そんなこと言ったって、大抵の人はいやがります。誰だって慣れたシステムを後生大事に使いたいものです。それで、できるだけ納得してもらうために、システムがどれだけの効果をもたらすか、事前に検証するシステムが必要です。この検証のための「シミュレータ」の開発を行っています。このようなシミュレーションにおいては、システムだけでなく人間がどのように振る舞うかも考慮しなければなりません。エージェントに命令された通りに行動してくれない人間はたくさんいます。人間の行動によってシステム全体がどのような振る舞いを示すのか、非常に興味深いものがあります。すでに面白い結果も出ています。

今後の研究課題

このようなエージェントが導入されると、いろいろな仕事の記録が自動的に残されるようになります。このような記録をどうやって蓄積し、解析に役立てて行くかが一つの課題です。

また、人間の仕事だけでなく、工場の生産などの活動もインターネットの発達などに伴い非常にオープンでダイナミックなものになってきています。このような分野への応用も検討しました。(→ 東京工業大学フロンフィア創造共同研究センター (環境系研究機能) とH12-13年度共同研究)

興味のある方は、下記論文を参照したり、メールで質問したりしてください。

関係論文

Tarumi, H., Mizutani, S., Matsuyama, T., and Kambayashi, Y.: Simulation of Agent-Based Groupware with Human Factors, Proc. of Database Applications in Non-Traditional Environments (DANTE'99), IEEE< pp. 343-350 (Dec. 1999)

Tarumi, H., Matsuyama, T., and Kambayashi, Y.: Evolution of Business Processes and a Process Simulation Tool, Proc. of Asia-Pacific Software Engineering Conference (APSEC'99), IEEE, pp.180-187 (Dec. 1999)

Tarumi, H., Matsuyama, T., and Kambayashi: Group Activity Database for Groupware Evolution, in Advances in Database Technologies, Kambayashi, Y., et al. Eds., Lecture Notes in Computer Science, Vol. 1552, pp. 408-420, Springer-Verlag (1998)

Group'97論文 (PDF, 230K,) (NEC時代の論文)

研究チーム

OB